2012年3月31日土曜日

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痛み分かち合う行動を 山下俊一氏に聞く 2012年03月12日

痛み分かち合う行動を 山下俊一氏に聞く

2012年03月12日
写真
山下俊一氏
 ◇長大から福島医大副学長へ
 今後の震災復興で長崎が果たすべき役割は何か。長崎大から福島県立医科大の副学長に転じ、福島県民とじかに接している山下俊一氏(59)に聞いた。 
 ――福島の現状は
 「当初は情報がなく、ひとことで言えば放射能恐怖症が横行したが、ずいぶん落ち着いてきたと思う。ただ、今も環境汚染、食の安全などのストレスがあり、不安は解消されていない。非常事態が続いている」
 ――低線量被曝(ひばく)のリスクを軽視し、「安全」ばかりを強調する学者だとバッシングを受けたが
 「1回に100ミリシーベルト以上の放射線をあびなければ発がんのリスクは増えない、というのが私の基準だ。これは広島・長崎の被爆医療の経験やチェルノブイリ原発事故のデータがよりどころ。当初は情報がない中、正しく怖がらせるためにそういう話をした」
 「だが、放射線に対する安全や防護の基準の考え方と、実際に健康影響を及ぼすリスクの話がごっちゃになってしまった。一般の人の平時の被曝限度は1年で1ミリシーベルトという数値だけが独り歩きした。1ミリを超えたら危ない、というふうに理解された。私は決して100ミリシーベルトまで被曝していいと言っているわけではない。なのに突然、安全派と危険派に分けられた」
 ――すべての福島県民を対象に中・長期的な健康調査が始まった
 「健康調査は我々医療関係者の最大の責務だ。自ら選択して住み続ける人たちを見守っていかなければならない。今も200万人近くの人が大変な生活をし、風評被害に耐えている。その方たちに危険をあおって、福島から出て行けという方が無責任だ」
 ――被爆地・長崎の復興支援はどうあるべきか
 「人的交流は大きな励みだ。継続した人材派遣だけでなく、長崎へ人材の受け入れもあっていい。福島産のコメや果物、酒を正規の値段で買うことも貢献の一つ。残留放射性物質は基準値以下であれば問題はない。法的な規制の問題と実際の健康リスクの違いをしっかり分けて議論するべきだ」
 ――今、私たちに問われることは何か
 「震災がれき一つとっても、とんでもないという反応は最初は当然だと思う。だが、乗り越えなければならないことだ。痛みを共有する、重荷を分かち合うという覚悟ができるかどうか、今度は行動力が問われる。そういう2年目、3年目にしなければならない」(聞き手・花房吾早子、江崎憲一) 
 【やました・しゅんいち】
 1978年長崎大医学部卒の被爆2世。専門は甲状腺がん治療の研究。旧ソ連チェルノブイリ原発事故の医療支援を91年から続け、東日本大震災の直後から福島県の放射線健康リスク管理アドバイザーに。昨年7月、長崎大大学院教授を休職し、福島県立医科大副学長に就任。 

「Mr.100ミリシーベルト」山下俊一教授の「闘争宣言」を嗤(わら)う ~『福島民友』(2011年6月20日)のインタビュー記事にふれて~

「Mr.100ミリシーベルト」山下俊一教授の「闘争宣言」を嗤(わら)う
~『福島民友』(2011年6月20日)のインタビュー記事にふれて~
                       [転送・転載歓迎]

東京の杉原浩司です。これは一人でも多くの人たちに伝えざるを得ないと
思い発信します。福島県民を被ばくから守るのではなく、被ばくを強いて
いる山下俊一教授(福島県放射線リスクアドバイザー)が遂に「闘争宣言」
を発しました。地元紙において、県民に対して。

子どもを被ばくから守ろうとする親を「利己的」とののしり、「子どもに
は、海図のない放射能の海に出て、ストレスの中で自己判断する苦労をさ
せよ」と県民に説教する姿に戦慄を覚えます。

山下教授が地元紙で県民に向かってここまで語るのは、県民の分断を先鋭
化させることで自己防衛を図る戦略なのでしょうか。一刻も早くこの恐る
べき人物を福島県から永久追放し、加害責任を取らせなければならないと
決意を固めました。「我慢比べ」するゆとりはありません。

以下は、地元紙『福島民友』6月20日付のインタビュー記事の後半の抜粋
です。「  」内が山下教授の発言部分です。ぜひご一読ください。

◆県放射線健康リスク管理アドバイザー 山下俊一氏に聞く
~収まらない放射線への不安~
自己判断の「覚悟」必要  「われわれは福島の応援団」

山下俊一氏(やました・しゅんいち)
長崎大卒。長崎大大学院医歯薬学総合研究科長、元原子力損害賠償紛争
審議会委員(6月初めに辞任)。内分泌学、環境影響評価・環境政策、分子
生物学。世界保健機関(WHO)緊急被ばく医療協力研究センター長、日
本甲状腺学会理事長など歴任。4月から福島医大理事長付特命教授。58歳。

(略)

――20ミリシーベルトの基準について、どう考えているのか。
「100ミリシーベルトを受けた遺伝子(DNA)の傷に比べ、20ミリシーベ
ルト、1ミリシーベルトを受けた時の遺伝子の傷は圧倒的に少ない。一方、
遺伝子は修復する力があり、傷が少なければ直してしまう。国際的な政策
論で被ばくは100ミリシーベルトを超えてはならない―とされているが、こ
れ以下で住民の安全をいかに確保するかというとき、20ミリシーベルトは
厳しいレベル。事故が収束していない段階では理にかなっている。『平時
は1ミリシーベルトだから』と言われるが、現実的に(放射性物質が降下
し)それは不可能で、文科省は段階的にしか下げられないし、今後も根拠
になる」

 山下氏は講演で「福島県民の覚悟が問われている」と発言しているが、
意図が県民に伝わっていない。アドバイザー選任に関しては県議会でも
質問があり、福島大の若手研究者有志は県に要望書を出すなどした。

――覚悟とは、何か。
「福島の人は原発事故と放射能汚染で、一人では背負いきれない大きな重
荷を負った。我慢の時に誰かが重荷を背負う取り組みが必要。将来がんに
なる恐怖に対し、リスクをどう判断するか、自分自身の覚悟が問われてい
る。去るのも、とどまるのも、覚悟が必要」

――専門家でない母子は判断できないのでは。
「自分の子だけがかわいいでいいのか、利己的では解決できない。心をオ
ープンにしないと共に重荷は背負えない。チェルノブイリでは政府が情報
公開せず、政府にだまされた。国が崩壊して突然情報があふれ、住民は
不安の中で逃げろと言われた。われわれは福島の応援団で『チェルノブイ
リにするな』『人心を荒廃させない』と考えている。福島で頑張ろうとい
う人がボランティアで、日本全体で支援するということを、県民も理解し
てもらわないといけない」

――自己判断では、原発災害の補償対象にならないのではと不安になる。
「過保護を否定はしないが、子どもには苦労をさせるべきだ。ストレスの
中できちんと自己判断する苦労。○×の答えがないグレーゾーンでリスク
と便益を判断する。海図のない海に出るのが、覚悟の意味です」

 山下氏は「政府の御用学者」の批判に強く反発し、原子力政策や政府の
現状を批判する。ただ、放射能汚染下での教育、復興を担う人材育成を強
調する山下氏の理念は、自分の家族を今必死に守りたい県民の間に浸透で
きるのか。山下氏は放射線の単位などが一応知られた被災3カ月以降、医
師らに協力を求め、放射線の理解を広めたい考えだ。

「僕と県民の我慢比べだね」

 ……………………………………………………………………………

<ぜひご協力ください! 広めてください!>

◆福島の子どもたちを守るための緊急署名
 ~避難・疎開の促進と法定1ミリシーベルトの順守を~
 (山下俊一教授のリスクアドバイザーなどからの解任も要求)
http://www.foejapan.org/infomation/news/110610.html

オンライン署名
http://goo.gl/Hbq3Z

紙版(以下からダウンロード)
http://dl.dropbox.com/u/23151586/kami_kodomosyomei.pdf

◆「山下俊一氏を福島県の放射線リスク・アドバイザーなどから解任する
ことを求める県民署名」(避難者を含む福島県民が対象)

オンライン署名
http://goo.gl/vh37x

紙版(以下からダウンロード)
http://fk-m.com/re-yama

◆福島大学准教授有志による要望書
http://dl.dropbox.com/u/23151586/fukudai_yushi_yobo.pdf

2012年3月30日金曜日

山下俊一氏論文一覧

15年戦争資料 @wiki 長崎大・山下俊一教授の『語録』

15年戦争資料 @wiki   長崎大・山下俊一教授の『語録』


観音開きの名刺でも書ききれない肩書き

山下 俊一(やました・しゅんいち)教授 
長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 附属原爆後障害医療研究施設 教授 
世界保健機関(WHO)緊急被曝(ひばく)医療協力研究センター長 
日本甲状腺学会理事長 
※現在、福島県知事の要請で、放射線健康リスク管理アドバイザーとして現地の被ばく医療に従事している。

(福島民友6/20記事での肩書き) 
山下 俊一氏(やました・しゅんいち) 
長崎大卒。長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長、 
原子力損害賠償紛争審査会委員。 
内分泌学、環境影響評価・環境政策、分子生物学。 
世界保健機関緊急被ばく医療協力研究センター長、 
日本甲状腺学界理事長など歴任。 
4月から福島医大理事長付特命教授。 
58歳。

2011年7月、山下俊一(59)氏は長崎大学を休職し、同15日、福島県の医療の中核である福島県立医大(福島市)の副学長に就任した。

それでもなお、本人が出し渋っているのか、まだまだ重要な公職名があるらしい。 
google検索⇒「site:www.nsc.go.jp/  山下俊一」

3.11以前


3.11以後


3/19県アドバイザー就任以後3/24まで


3/25以降、県広報やマスメディアによる山下発言増幅期






官制Q&Aパンフ



5月




6月





7月



【批判】



8月


8月19日付けドイツ・シュピーゲル誌記事全訳 福島事故の余波 「住民は放射能恐怖症にかかっている」

EX-SKF-JPさん


放射線研究で世界に冠たろうとする山下俊一教授、 
独シュピーゲル誌とインタビュー


ドイツのシュピーゲル誌のインタビューに応じた長崎大・福島医大の山下俊一教授、いろいろと過去の発言について鋭く突っ込まれています。


「放射線の影響はにこにこ笑ってる人には来ない、くよくよしてる人に来る」という発言の意図は?


山下:リラックスも大事だと


リラックスしやすいようにと、年間100ミリシーベルト被曝しても大丈夫だともおっしゃっているが?


山下:日本政府が混乱させたのが悪い。


教授を非難する人々がいるが?


山下:そういう人たちは科学者じゃない。医者でも専門家でもない。


原発周辺の住民には放射線によるどのような健康リスクがあるか?


山下:そんなものはない。放射線のレベルが低すぎる。


大熊町の一年間の積算放射線被曝量は508ミリシーベルトです。山下教授にとってはそれでも低すぎるんでしょうか。


そのくせ、教授は、住民に放射線リスクなどはない、と言ったすぐそばから、福島県全体、県民全員を対象にした科学界未曾有の規模の研究について嬉々として語っています。血圧上昇を覚悟で記事の全訳、お読みください。


しかし一つ解せないのは、こんな学者を世界の学者が放っておくことです。



全訳 
福島事故の余波 
「住民は放射能恐怖症にかかっている」


下線は引用者ni0615




山下俊一は放射線の影響を研究する分野において日本を代表する科学者の一人だ。山下は『シュピーゲル』紙とのインタビューで、福島第一原発周辺の住民に放射線被曝の潜在的危険性を伝える仕事について語った。多くの住民が重度の放射能恐怖症にかかっていると山下は話す。


低線量放射線被曝は人体にどれくらい害を及ぼすのか。この問題については科学者のあいだで熱い議論が戦わされている。しかし、原発周辺の住民にその議論の詳細まで説明するには、今はいい時期とはいえない。住民は今まさに放射線の危険と背中合わせで暮らしているからだ。


山下俊一は放射線防護の専門家で59歳。放射線の影響を解明するうえで多大な貢献をしてきた。長崎の被爆者や、1986年のチェルノブイリ原発事故の影響を研究し、チェルノブイリについては日本の科学調査団の一員として現地を100回近く訪問している。山下が今調べているのは福島における大事故の影響だ。ところが、山下の仕事は地元住民の強い反発を買っている。


『シュピーゲル』は山下にインタビューし、福島で予想される被曝の影響や、過去最大級の科学研究をこの地域で行なう計画について話をきいた。この研究で山下は、約200万人の被験者を対象に原発事故の健康影響を調べる考えだ。




シュピーゲル:あなたは福島県から招聘されて、被害地域の住民に放射線リスクを伝える仕事をしてきた。一番最初に「放射線の影響はにこにこ笑ってる人には来ない、くよくよしてる人に来る」とおっしゃったが、あれはどういう意味だったのか。


山下:あれは3月20日の最初の集会でしたね。本当にショックを受けましたよ。皆さんあまりに真面目で、誰も笑わないんですから。


シュ:自分たちの村や町が放射能で汚染されてしまい、目に見えない危険がどんなものかを誰も知らない。そういう反応も当然だと思うが。


山下:皆さん非常に重苦しい雰囲気でした。ラットを使った動物実験からは、ストレスを感じやすいラットほど放射線の影響を受けやすいことが明確にわかっています。放射線の影響下にある人たちにとってストレスは百害あって一利なしです。しかも精神的なストレスは免疫系の働きを抑制するため、ある種のがんや、がん以外の疾患の発症につながるおそれがあります。だからリラックスも大事だと話したのです。


シュ:住民がリラックスしやすいようにと、年間100ミリシーベルト被曝しても大丈夫だともおっしゃっている。通常それは原発労働者の緊急時の被曝上限だと思うが。


山下:100mSvでも大丈夫だから心配いらない、などとは言っていません。ただ、100mSv未満ではがん発症率の上昇が証明できていない、と話しただけです。これは広島、長崎、チェルノブイリの調査から得られた事実です。


シュ:だが、そうやって安心させようとすることが、住民の方々の怒りと恐怖をかえって高めることになるとは思わなかった?


山下: 日本政府が年間被曝上限を20mSvに設定したことが、混乱に拍車をかけたと思います 。国際放射線防護委員会(ICRP)は、原子力非常事態が起きた際には年間被曝上限を20~100mSvのあいだに設定するよう提言しています。その範囲のどこで線引きをするかは政治的な判断で決まることです。リスクと利益をはかりにかけて考えなくてはいけません。避難するにしてもリスクを伴うからです。放射線防護の観点から見れば、 日本政府は最も慎重な方針を選んだのですが、それが皆さんの混乱と不安を高めてしまいました。


シュ:あなたはご自身の数々の発言のため世間で物議をかもしている。あなたを刑事告発したジャーナリストがいるし、反原発の活動家は……


山下:……そういう人たちは科学者ではありません。医師でもなければ放射線の専門家でもない。研究者が研究を積み重ねてきめた国際基準についても何も知りません。皆さんが噂や雑誌や、ツイッターの情報を信じているのを見ると悲しくなります。


シュ:だが専門家は原発は100%安全だと何十年も言い続けてきた。そんな専門家を信じられるわけがない。


山下:私は福島に来て、こういう事故に対する備えがまったくなされていなかったのを知って驚きました。私はかつて中国や旧ソ連諸国に放射線防護に関する助言をしました。今度は自分の国で恐ろしい事故が起きたのに、誰も備えをしていない。福島の人たちは、自分たちの地域に原子炉が11基あることも知らなかったんです。福島大学の医学部には放射線防護医学の専門家がただの一人もいませんでした。


シュ:事故の被害に遭った人たちに対して、今だったら話し方を変えるか?


山下:最初は住民が放射能について何の知識もなかったので、曖昧な表現を避けようと思いました。今では白黒をはっきり言うのではなく、灰色の部分も伝えるような話し方に変えています。


シュ:住民ははっきりした答えを知りたがっている。どこまでが安全なのか。どこからが安全でないのか。


山下:そういう答えはありません。「100mSvまでなら100パーセント安全なんですか?」と尋ねられたら、科学者としてこう答えるしかないのです。「わかりません」と。


シュ:これまでの研究で、100人が100mSvの放射線を浴びたら1人がその放射線のせいでがんを発症することが統計的にわかっている。同程度のリスクが100mSv未満にも当てはまる可能性はあるのか。


山下:可能性はあります。ただ問題は、低線量被曝の健康リスクを推測する際にいわゆる「しきい値なしの直線線量反応モデル」というのが使われることです。このモデルは、たとえわずかでも通常時より多い被曝を受けたら、その被曝した集団の中でがんの発症率がわずかに上昇するという前提に立っています。そうした上昇は理論的にはありえますが、被曝量が100mSv未満の場合には統計的に有意な上昇ではないので、リスクが高まることを支持しているとは言い切れません。それに、何が原因で腫瘍ができたかは区別できません。放射線由来の腫瘍であることが突き止められるような特有の特徴が残るわけではないのです。放射線生物学の研究からは、低線量被曝で人間のDNAが傷つくこともわかっています。ですが、人体はそうした傷を短時間でうまく修復する能力をもっています。 生まれながらに人体に備わった防護メカニズムです。私はそういうことを伝えようとしているのです。


シュ:では、そういう情報を住民はどう受けとめればいいのか。


山下:低線量被曝の状況下では、残るか去るかは住民自身が判断しなくてはなりません。ほかに決めてくれる人はいません。自分でリスクと利益をはかりにかけて考えるのです。避難すれば仕事を失い、子供は転校を余儀なくされるかもしれません。それがストレスにつながります。反面、その一家は発がんのリスクを回避できるかもしれません。発がんリスクといってもごくわずかではありますが。


シュ:原発事故の被害を受けたうえにそうした決断を自分たちでしなければいけないとういのは、家族にとってきわめて大きな負担だ。


山下:その通りです。ですから東電も日本政府も、家族が決断しやすいように支援してあげる必要があります。留まろうと思う住民に対しても、1mSvを少しでも超えたら高すぎると考える住民に対しても。


シュ:原発周辺の住民には放射線によるどのような健康リスクが考えられるのか。


山下: 周辺住民に放射線による直接的な影響が生じるとは思いません。線量が小さすぎます。


シュ:では、がんもがん死もまったく起きないと?


山下:データに基づいて考えればそうなります。もちろん原発作業員の場合は別です。


シュ:あなたはこれからの研究計画についてすでに話をしている。福島県民の健康状態を今後30年にわたって追跡調査すると。


山下:現在の状況では、私たちは地元の方々になかなか受け入れてもらえません。考えられる最良の医療を住民の皆さんに提供することが最優先です。


シュ:これまでにもっと思いやりのある話し方をしていれば住民に受け入れられたのではないか。


山下:今回の事故のせいで、福島県民は東電と日本政府への信頼を完全になくしました。住民の皆さんは苦しんでいます。地震と津波の被害だけでなく、 放射線対する大きな不安に苦しんでいます。まさに放射能恐怖症です。ですから、私たちはその不安を和らげて、住民の心の支えになってあげる必要があります 。疫学研究の話はあとからでもできます。地元住民の支援なしには私たちは何もできません。今の状況では、私が長崎とチェルノブイリで研究した専門家であるという肩書きもいっさい役に立たないのです。だから私は福島に移ってきました。


シュ:研究ではどういうことを調べるつもりなのか。


山下:被験者を3つのグループに分けます。原発労働者、子供、それから一般住民です。労働者は高線量の放射線に被曝しています。がんをはじめとするいろいろな疾患について、放射線の影響を追跡調査することが絶対に必要です。一般住民はさらに2つのグループに分かれます。比較的低線量の被曝をした住民と、比較的高線量の被曝をした住民です。福島県の保健福祉部では、26,000人の住民を対象に先行調査を行なっており、まもなく問診票の回収を終える予定です。


シュ:でも住民自身は自分の被曝量がわからない。


山下:それは私たちが突き止めないといけません。3月11日には何時にどこにいたかをきき、以後も3月中の毎日について同じ質問をしています。それから、事故後最初の2週間に何を食べたかや、自宅やアパートが木造かどうかといったことも確認します。そうしたデータと、放射能の雲の分布状況を組み合わせて、それから被曝線量を計算するのです。


シュ:どれくらいの人が被験者になるのか。


山下: 200万人の福島県民全員です。科学界に記録を打ち立てる大規模な研究になります 。政府は原発事故の被害者に対する補償金について先ごろ決定を下しました。そうした補償プロセスを通じて、県外に避難している住民の方々にも連絡を取りたいと考えています。


シュ:子供についてはどうか。


山下:18歳未満の子供全員について甲状腺の超音波検査を実施したいと考えています。全部で360,000人です。被曝してから甲状腺がんを発症するまでには約5年かかります。それはチェルノブイリの経験で明らかになったことです。


シュ:事故による精神的な影響についても調査しているのか。


山下:もちろんです。チェルノブイリの経験から、心理的な影響が非常に大きいことがわかっています。チェルノブイリでは避難住民の寿命が65歳から58歳に低下しました。がんのせいではありません。鬱病やアルコール依存症、自殺などのためです。移住は容易ではありません。ストレスが非常に大きくなります。そうした問題を把握するとともに、その治療にも努める必要があります。さもないと住民の皆さんは自分が単なるモルモットだと感じてしまうでしょう。


インタビュー:コーデュラ・マイヤー


山下俊一について 
山下俊一、59歳。放射線の影響を研究する分野において日本を代表する専門家の一人。長崎大学大学院医歯薬学総合研究科教授。福島第一原発の事故後、福島県放射線健康リスク管理アドバイザーに就任。



EX-SKF-JPさん


DNAの修復が短時間で出来るのは、放射線被曝が短期間で終わった時の事でしょう。今回のように、被曝がずっと続いている状態でどのような修復がなされるのか。なされないのか。


ああ、この先生はそれを調べたいわけですね。数年、十数年、数十年かけて。モルモットにモルモットと感じさせないために、いわゆる「心のケア」も忘れないそうですから、皆さん安心してください。


福島原発事故で信頼を失ったのは東電と日本政府だけではなく、山下教授のような専門家もなんですが、その辺はごっそり認識が抜けていますね。さすがです。


(H/T東京茶とら猫)